出生前診断と年齢の関係とは?何歳になったら出生前診断を受けるべき?
突然ですが、あなたの年齢はいくつですか?
この質問をするのには理由があります。それは、出生前診断と年齢には密接な関係があるからです。
例えば、染色体異常の発生確率やある時期から急激に高まったり、出生前診断の種類によっては、年齢制限があったりします。
これらの話を加味して、35歳以上が出生前診断を受けるためのボーダーであるという話も聞きます。実際はどうなのでしょうか?
この記事では、出生前診断と年齢の関係について触れながら、出生前診断の適正年齢について紹介します。
出生前診断とは
出生前診断(出生前検査)とは、お腹の中の赤ちゃんの病気や障害がわかる検査です。
この検査では、主にダウン症候群(21トリソミー)・エドワーズ症候群(18トリソミー)・パトー症候群(13トリソミー)などの染色体異常を検査することができます。
検査の種類によって、検査項目・精度・費用・検査の時期・結果を受け取るまでにかかる時間・リスクなどに違いがあります。
引用元: GeneTech株式会社
出生前診断と年齢の関係
①年齢が高くなるごとに染色体異常の可能性は高まる
先天性疾患の可能性は、母体の年齢の高さに比例すると言われており、特に、35歳以上になるとその可能性は一気に高まります。
ダウン症の可能性で言えば、20歳の妊婦さんは1/1441の確率ですが、40歳の妊婦さんはその確率が1/84に跳ね上がります。
母体年齢 | ダウン症候群 | 18トリソミー | 13トリソミー |
20 | 1/1441 | 1/10000 | 1/14300 |
25 | 1/1383 | 1/8300 | 1/12500 |
30 | 1/959 | 1/7200 | 1/11100 |
35 | 1/338 | 1/3600 | 1/5300 |
40 | 1/84 | 1/740 | 1/1400 |
45 | 1/30 | ─ | ─ |
参考:Gardner RJM. Chromosome Abnormalities and Genetic Counseling 4th Edition, New York, Oxford University Press 2011
なぜ年齢によって染色体異常が起きやすくなるのでしょうか?
男性の精子は毎日作られるのに比べて、女性の卵子は胎児の時に一生分作られます。
そのため年々、卵子が老化することによって、卵子の機能が下がり、46本、23対あるはずの染色体が均等に分裂できない可能性が高まってしまいます。
すると、精子と巡り合った時に通常2本1対で存在するはずの染色体が、3本に増えてしまうトリソミーや、1本少ないモノソミーと呼ばれる染色体異常が起きてしまいます。
これが、染色体異常が起きやすいメカニズムです。
ちなみに、異常が起きた染色体によっては、ダウン症候群(21番染色体が1本多い異常)のように、出生が可能な場合もありますが、中には流産(死産)となってしまう場合もあります。
年齢が高い妊婦さんは、流産と先天性疾患の可能性が高まることに注意しましょう。
※参考
②年齢によって結果の出方が変わる出生前診断もある
出生前診断の中には、年齢によって、検査結果の出方に違いが出る検査もあります。
例えば、クアトロテスト(母体血清マーカー検査)は、年齢が高くなるほど陽性が出やすい傾向があります。
引用元:母体血清マーカー検査(クアトロテスト)とは – 兵庫医科大学病院 出生前診断
この表を見ると、35歳未満の方では陽性率が5%とかなり陰性の可能性が高いです。
一方で、40歳以上の方では約40%の方が陽性と、反対に陽性の可能性がかなり高いです。
35歳以上の方の場合には、検査で陽性になる可能性が高くなることを理解し、陽性の場合は、羊水検査やNIPTなど精度の高い検査を受けることを検討しなければなりません。
※参考
③出生前診断には年齢制限を設けているものもある
新型出生前診断(NIPT)と呼ばれる検査があります。
NIPTは、母体血を20mlほど採取し、胎児と同じ染色体をもつ絨毛細胞由来のDNAを利用して検査を行います。
妊娠10週目と早い段階から検査を受けられるだけでなく、流産や破水など重大なリスクがない上、採血だけで99.9%以上の高精度と従来検査と一線を画す、まさに新型の出生前診断です。
しかし、日本産科婦人科学会が発表している、母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針によると検査を受けられる妊婦さんは限られています。
1.胎児超音波検査で、胎児が染色体数的異常を有する可能性が示唆された者。
2.母体血清マーカー検査で、胎児が染色体数的異常を有する可能性が示唆された者。
3.染色体数的異常を有する児を妊娠した既往のある者。
4.高年齢の妊婦。
5.両親のいずれかが均衡型ロバートソン転座を有していて、胎児が 13 トリソミーまたは 21 トリソミーとなる可能性が示唆される者。
※出典元
簡単にまとめると、高年齢であるか(一般的には35歳以上)、赤ちゃんが染色体異常を患っている可能性が高いと客観的に判断できる場合しか、検査を受けることができないのです。
指針上では、34歳以下の妊婦さんはほとんどの場合、流産のリスクがある羊水検査か、精度の低い母体血清マーカーなどを選ぶ他ないのです。
適正年齢は35歳以上なのか?
35歳から染色体異常が急激に高まることや、年齢制限があることから、35歳が適正年齢なのではないか?という声もあります。
しかし、一概に適正年齢が35歳であると言い切れないと思います。
その理由は二つあります。
- 35歳以下の妊婦さんでもそれ以上の方でも、染色体異常の可能性は否定できないから
- 夫婦によって様々な考え方があるから
①35歳以下の妊婦さんでもそれ以上の方でも、染色体異常の可能性は否定できないから
どの年齢で出産しても、染色体異常が発生する可能性は否定できません。
たとえ500人に1人の可能性と言われていようと、自分の子どもがその1人ではないという保証はありません。
母として、お腹に宿った命を思うと言葉にできないほど幸福で、とても愛おしいです。
しかし、同時に、自分たちにこの子を育てることができるのか、私だけでなく、家族にも負担がかかるのではないか、など不安に思う気持ちとの葛藤もあるでしょう。
この気持ちに年齢は関係ありません。
事前に赤ちゃんの状態を知っておくことで赤ちゃんを迎える準備もできます。検査を受けるのは一つの選択肢であり、絶対に35歳以下の妊婦さんが検査を受けるべきではないと言い切れないと思います。
②夫婦によって様々な考え方があるから
東洋経済オンラインでは、出生前診断を受けたくないと考えている41歳の妊婦さんが紹介されていました。
染色体異常の確率が上がる年齢なだけに、私もかなり不安ですが、もし検査結果が陽性だったとしても、お腹の子をあきらめる自信がありません。なので、検査を受けたくないのですが、そうすると夫との間では話がそこで止まってしまいます。
※出典元
高齢出産…出生前診断を受けるべきですか? | 堂薗姐さんに聞け!キャリア女の人生講座 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
41歳というと、ダウン症候群の可能性は1/84です。
この女性は不安こそあるものの、検査を受けたくないのに対し、旦那様は高年齢出産のリスクを考慮すると、出生前診断を受け、もし正常でなかったらその時点であきらめてほしいという意向。夫婦で意見が分かれていたようです。
高年齢出産だから、子どもが絶対に染色体異常を患っている訳ではありません。
また、たとえ染色体異常を患っていたとしても、自分は子どもを育てると決めている方もいらっしゃることでしょう。
反対に、先に生まれているお子さんへの負担や、自立するまで自分たちが元気でいられる保証がないことなど、現実的なことを考えるとどうしても不安は付きまといます。
出生前診断を受けるか受けないか、正解はありません。夫婦で話し合い、二人が納得した決断をすることが肝心です。
まとめ
- 染色体異常の可能性は年齢に応じて高くなる。特に35歳から急激に高まる。
- 新型出生前診断は年齢制限がある。(※例外あり)
- 出生前診断に適正年齢はない。自分たちが検査を受けるべきかどうか深く考えることが重要。
いかがでしたか?
出生前診断や染色体異常に関する話題は白黒つけられるものではなく、それぞれ考え方が異なるでしょう。
知識をきちんと身につけた上で、自分たちはどう思うのか、実際に出生前診断が必要なのかを考える必要があります。
熟考の上、出生前診断を受けると決断した場合は、どの出生前診断を受けるのか、どこで検査を受けるべきかを考えていきましょう。
特に、NIPTは年齢制限があるため34歳以下の方は検査を受けられないと考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、年齢制限のないNIPTを提供しているクリニックもあります。
NIPTを実施しているおすすめの病院については以前記事にしているのでそちらもよろしければご覧ください。